日本大学生産工学部 数理情報工学科 新着情報
Mathematical Information Engineering News

海外派遣研究員としてシリアスゲームに関する研究・教育事情を調査するために各国の大学を訪問中の古市先生が,11月はブラジル・サンパウロ大学を訪問中です.

サンパウロ大学は,日本大学が学術交流協定(協定校)を締結している南米大陸の2大学のうちの一つです.日本大学を国内外に紹介する際,日本一学生数の多い大学ですと紹介して欧米の大学の方から規模にビックリされることが多いですが,サンパウロ大学ではこれが通用しません.なんと学生数は約95,000人,更に驚くことに大学院生の数が約45,000人と,学生数において日本大学を遥かに超える規模,そして大学院生の数からわかるように自他認める研究大学です.ちなみに,日本大学は2015年5月現在学生数が69,756人,うち学部生は66,956人,大学院生は2,800人です.更に驚くことに,サンパウロ大学は州立の大学ですが授業料がタダ,先生に聞く所によると,州外及び外国人も含めてタダのようです.その分競争率が大変高く,日本以上と同様に受験戦争は大変だとのこと.更に更に驚いたのは,日系人の学生比率が高く,20%を超えているようです.学内には日本の文化を伝える立派な日本会館があり,研究者の皆さん(特に医学系)にも日本の名前を持った方が多く,”百聞は一見に如かず”を訪問して痛感しました.サンパウロ大学に滞在中,シリアスゲームに関する調査を目的として訪問した2つの組織を,以下古市先生から紹介していただきます.

まず紹介するのはサンパウロ大学・学際領域インタラクティブ技術研究センタCITI.CITIは情報工学を中核として学際領域各分野の融合を目指した研究センタで,いずれの学部にも属さないサンパウロ大学直下の研究センタで,上記写真の右上に示す体育館のような形状をした3階建ての建物を中心に,いくつかの実験装置等は分散しています.CITIはその名が示す通り工学,医学,心理学,考古学等様々な分野の先生方が集まった学際領域に関わる研究を行う研究所で,今回見学させていただいたのは主としてバーチャル・リアリティと医療福祉工学に関する研究をされている先生方でした.私の目から見ると,「全員がシリアスゲームに関する研究をされている」と言い切っても過言ではなく,皆さんはいずれもシリアスゲームという言葉をご存知で無かったのですが,私が簡単なレクチャをした後には全員がこれに同意して下さいました.

続いて紹介するのは,サンパウロ大学の医学部のリハビリテーションセンターです.シリアスゲームがこれまで最も活躍してきた現場が,私が会社勤務時代に開発に携わった防衛・宇宙分野ですが,今後の応用が期待されるのが教育及び医療・健康・福祉分野です.その中でも最も実用化が進んでいるのが医療・福祉分野ですが,これまで古市先生は日本国内でしかこのようなセンターを見る機会がなく,我が国ではまだシリアスゲームの現場での利用はこんなものかと思ってました.そこで今回訪れたのが南米で最大の医学部を有するサンパウロ大学医学部,そこのリハビリセンターを訪問してきました.日本ではおそらくリハビリセンタは大学病院と同じ場所に付属しているものが多いと思いますが(間違っていたらご指摘下さい),サンパウロ大学では大学病院とは全く独立した組織として存在する大きなセンターとして機能しているのに驚きました.

見学してまず驚いたのは,さすが南米大陸最大の大学病院だけのことがあって実に高価な機器が多数利用されていることと,ほとんど全ての機器がコンピュータゲームと連携している点,すなわち,実際に現場で治療に使われているシリアスゲームが100を超えるぐらいの数あるということにビックリしました.いずれも患者さんが楽しそうに(苦しそうな表情をされている方もいらっしゃいましたが,実に楽しそうでした!)に利用されており,それ故写真をこちらで紹介できないのが残念ですが,私が患者さんになって撮ったものは上記写真の通りです.この写真の装置は安価を目指して米国MITをスピンアウトした方が開発されたものですが,それ以外のものは想像が付かないぐらいの価格がするものばかりでした.また,数理情報工学科に今年入ったモーションキャプチャシステムと同じ機種のシステムもありましたが,映画館のモーキャプスタジオ並の場所で利用されており,何もかも驚きでした

もう一つ驚いたのは,この大学病院には実に日系の方が多く活躍されていることで,医院長のミヤザキ氏も日系の女性の方でした.今後,数理情報工学科で開発したシリアスゲームや医療・福祉支援のための装置を医療現場で評価する際には協力していただけることとなり,今後必要な手続き等をすすめようと思います.数理情報工学科の学生にとっては,言葉の心配が少ない(英語が主だが,日本語を使える方が多いという絶好の環境)というのが,とても魅力なのではないかと思います.今後が楽しみです.