国際交流・国際会議International Activities

数理情報工学科の古市昌一先生と東京工科大メディア学科の岸本好弘先生との発案により企画した第1回シリアス&アプライドゲームサミットが,2017年2月24日に東京のオランダ大使館で開催されました.主催は日本デジタルゲーム学会(DiGRA Japan)教育SIG, 共催はオランダ王国大使館."シリアス"と"アプライド"が初めて東京で出会い,ゲームの持つパワーについて両国の専門家が様々な切り口から話し合われました.

本サミットでは数理情報工学科の古市昌一先生が司会を務めた他,2年生から大学院生まで5名の学生が成果を展示し,我が国を代表するシリアスゲームの一つとして国内外の皆さんに体験していただきました.

4年生の鈴木雄次郎君が開発したLine H!tter
こちらの展示室では3年生の新井恒陽君等が開発したGo! Petil Go!と,同じく3年生の高橋昴大君等が開発した Blind Mazeを展示しました

開催概要(Executive Summary)
第1回シリアス&アプライドゲームサミット 実行委員
日本デジタルゲーム学会 ゲーム教育SIG委員
日本大学生産工学部 数理情報工学科
古市昌一 教授

第1回シリアス&アプライドゲームサミットを2017年2月24日(金)に東京港区のオランダ大使館で開催しました.我が国ではなかなか認知度が高まらないシリアスゲーム.一方オランダ王国ではシリアスゲームのことをアプライドゲームと呼び,様々な病院でのリハビリや訓練,企業や自治体における研修等でアプライドゲームが使われています.そのために,オランダにある約450社のゲームメーカのうち,なんと約120社はアプライドゲーム専業メーカです.ゲームは我が国の代表的な産業の一つであるにもかかわらず,シリアスゲームに対する関心や期待がなかなか高まらない日本,それをなんとかしよう!と,東京工科大学の岸本好弘先生と日本大学の古市昌一先生とが一緒に発案し,オランダ大使館のライテドウマ氏及びNPO法人IGDA日本の小野憲史氏とで企画運営したのがこのサミットです.会場のオランダ大使館は立ち見が出る程の盛況ぶりで,オランダからはユトレヒト州の州知事さんも参加して下さった他,日本とオランダのシリアスゲームに関する大御所研究者が一堂に介した,我が国のシリアスゲーム史に残るイベントとなりました.参加していただいた多くの企業の皆様,デモを快く引き受けていただいた企業及び大学関係の皆様,そしてオランダ大使館の皆様,どうもありがとうございました!合言葉は「Let's save the World by the power of Games!,ゲームの力で世界を救え!」です.

会場となったオランダ大使館の入り口
オープンニングセッションの講演者を紹介中の日本大学古市先生. 日本側代表として主催者挨拶を行う東京工科大学の岸本好弘先生 オランダ大使館からは,マーク・へリッツセン公使からご挨拶いただきました.オランダと日本の交流の歴史が長いのは皆さんご存知の通りですが,なんと,長崎の出島ではバトミントンを皆さんが楽しんでいたとの記録が残っているそうです.シリアス&アプライドゲームサミットも,そんな感じでオランダ人と日本人が一緒になってそこから新しい何かが生まれると良いですね! 長崎の出島ではビリヤードを皆さんが楽しんでいたとの記録が残っているそうです.ビリヤード台,現在と同じですね. 今回のサミットで一番遠くから来てくださったのが,ユトレヒト州のピム・ファンデンベルグ副知事です.ユトレヒト州はクリエイティブ産業がとても盛んなことで有名ですが,我が国からは沢山の我が国の企業が進出しているにもかかわらず,ゲーム会社は今のところゼロのようです.オランダで急成長しているアプライドゲーム産業,我が国の若者の皆さんは,オランダでの起業等を考えても良いのではないでしょうか.日本人は,昔締結した通商条約のおかげでオランダでの労働ビザが事実上不要,オランダにはチャンスが一杯あるかもです. 基調講演をされている東京大学の藤本通る先生.藤本徹先生の「シリアスゲーム」が刊行されてから今年で10年,最新刊は「ゲームと教育・学習」です.我が国でシリアスゲームの認知度が向上してオランダと同様に一つの産業分野となると,ゲーム開発技術者の可能性が更に高まるであろう,という言葉がとても印象的でした.これはおそらく,ゲーム開発技術者以外の多くの人にとっても,ビジネスチャンスが増えるだろう,と私も思いました.例えば,オランダで急速に普及しているのは企業研修のシリアスゲーム化と,病院における様々なアクティビティのシリアスゲーム化です.おそらく,我が国においてこれらに取り組んでいる皆さんは多方面から研究されていることだと思います. 本サミットの実行委員の中で一番若いオランダ大使館のライテ・ドウマ氏からは,オランダのゲーム産業について紹介していただきました.オランダにある約450社のゲーム会社のうち,約120社はシリアスゲーム専業の会社とのことで,日本との大きな違いに会場の皆さんはビックリしたことと思われます.また,東京ゲームショーに今年も出展すること等をお話ししていただきました. 千葉大学教育学部とグリー(株)は,大学における授業の一環として学習ゲームを開発する試みを続けています,今回は敬愛大学の阿部学先生からその取り組み内容を紹介していただきました.開発した学習ゲームは実際に小学校の授業で学生の教育実習で用いられており,その効果等が紹介されました.阿部先生はあえてシリアスゲームという言葉を用いてはおらず,学習ゲームという名称を用いてましたが,その学習ゲームの目的は「教員養成」であり,小学生のための学習支援を目指したものではない点が,とても印象に残りました. 大阪電通大のナガタタケシ先生からは,オランダにおけるアプライドゲームの産業分野化にとても重要な役割を果たしたHKU(ユトレヒト芸術大学)に関して,様々な情報を提供していただきました.ナガタタケシ先生はアニメータで,インタラクティブアートも手がけていらっしゃいます.今年の4月から1年間HKUへ研究員として行かれるとのこと,HKUの研究者と一緒に制作するアプライドゲームが期待されます. 我が国で(おそらく)最も多く商用化されたシリアスゲームを開発されているのが,九州大学の松隈先生です.九州大学医学部のリハビリセンターと共同で開発されており,成果は全国の病院等で使われています.講演の後,「ロコモでバラミンゴ」をインタラクティブセッションでデモしていただきました. オランダでアプライドゲームの産業分野化に重要な役割を果たしたのがHKU(ユトレヒト芸術大学)で,その中でも兼業により多数のアプライドゲームを開発しているのがディムさんです.今回は,医療応用を中心に紹介していただきました.オランダでは,例えばUMC(ユトレヒトにあるUniversity Medical Center)病院の中にはゲームメーカの方が駐在するオフィスがあり,そこでは医者とゲームメーカの方が次のアプライドゲームの企画を一緒に練っています(私が2016年に現場を観てきました).日本の病院も,いつかこのようになると良いなと思います.おそらく,病院に限らず,企業の人事・研修セクションで現在e-leraningコンテンツを制作している部署にも,ゲーム会社の人が常駐する時代がやってくるのではないかと,予想されます. 島根大の伊藤先生が開発されたEyeMoT,スクリーン側はNTTコミュニケーションズ(株)が開発したサイバーセキュリティに関するリテラシ向上を目的としたシリアスゲームです. ユトレヒト芸術大,千葉大,東京工科大,日本大が開発したシリアスゲームの展示会場 日本大のLine H!tter 総てのプログラムを終え,レセプションが始まるまえに撮った集合写真 レセプションを終えて帰り際に撮った写真